1-1-2 Damages
閲覧者数:326、最終更新日2021/12/23
本船がCancelling Dateまでに荷役準備を完了できなかったとしても、傭船者には契約の解除権が付与されるのみであって、その事実によって何らかの損害が発生したとしても、船主が当然に賠償責任を負うとは限りません。ただし、航海傭船契約上、船主は迅速に航海を遂行すべき義務を負うのが一般的ですから(以下、「Reasonable Despatch義務」という)、仮にこのReasonable Despatch義務違反等の契約違反が認められる場合には、傭船者は船主に対して遅延損害等の賠償を請求できる余地が生じます。また、この場合で本船の荷役準備完了が実際にCancelling Dateに間に合わなかったときは、傭船者は解除権及び損害賠償請求権を共に有することになります。
事例(ID:166)
相談者:船主 閲覧者数:56、最終更新日2021/12/23
前航の荷揚港において、付近にいた他船に生じた海難事故の影響によって当社運航船が遅延し、次航におけるCancelling Dateまでに積地に到着できなくなったことを理由に、想定外に生じた(とされる)積荷役にかかる追加費用の賠償を(次航の)傭船者から請求された。この請求に応じる義務はあるのか。
単にCancelling Dateに間に合わなかったという事実だけでは、傭船者に損害賠償請求権は無いと思われる。ただし、前港における遅延やそれに伴う次航への遅延に関して、契約上定められた積地到着予定日等の記載から生じる義務の違反や、Reasonable Despatch義務の違反が認められる場合には、損害賠償責任が肯定され、そのような請求に応じざるを得なくなる可能性がある。
事例(ID:167)
相談者:船主 閲覧者数:40、最終更新日2021/12/23
A契約締結後、前航(B契約)が想定外に早く終わったため、当該契約とは無関係の別の中間航海(C契約)に本船を投入した結果、C契約中に遅延が生じ、本船の荷役準備完了がA契約におけるCancelling Dateに間に合わなくなった。A契約の傭船者から、遅延によって生じた割増荷役費用の支払いを請求されているが、この請求に応じる義務はあるのか。
荷役準備の完了がCancelling Dateに間に合わないことをして直ちに損害賠償の責任を負うことになるわけではないが、本件では、傭船者との間でA契約を締結していたにもかかわらず、独自の判断で全く別のC契約を遂行したことで、A契約における遅延を招いたといい得ることから、いわゆるReasonable Despatch義務違反が問われ、損害賠償責任を負う可能性がある。
事例(ID:168)
相談者:船主 閲覧者数:41、最終更新日2021/12/23
本船A号が前航において他船の事故の影響を受け、次航のCancelling Dateに間に合わないことがほぼ確実となった。傭船者から代船の提供を求められたため、たまたま都合がついた代船B号の提供を提案したところ、傭船者に受け入れられたため、当該傭船契約はB号によって無事に遂行された。しかし、B号の荷役時にA号で想定していた以上の荷役作業費を傭船者がステベドア会社等に対し負担していたようで、これはA号が遅延したことにより発生したものであるという理由から、費用の差額を補償せよと傭船者から請求を受けている。当社にこの費用を支払う義務はあるか。
支払義務はないと思われる。一般的な航海傭船契約の解釈として、特段の定めがなければ、そもそも船主には代船を提供する権利あるいは義務はなく、今回は交渉によって使用船をA号からB号に変更するということが特別に約定されたものということができる。そうすると、もとよりB号を対象とする航海傭船契約が締結されていたとみなすことができるが、特段問題なく航海が終了したとのことで、船主による契約違反等、損害賠償責任が肯定されるような事象は何らなかったと思われ、何ら責任を負わないと解釈するのが妥当ではないか。ただし、A号からB号への変更に関する約定に際し、何らかの損害賠償請求権が傭船者により留保されていたのであればこの限りではないだろう。
事例(ID:169)
相談者:船主 閲覧者数:40、最終更新日2021/12/23
本船が遅延しており、次航のCancelling Dateに間に合わない可能性が出てきた。傭船契約上、実際に本船が間に合わなかった場合には、傭船者の契約解除権が付与されることに加え、それにかかる一切の損害を船主が賠償すべき旨の規定がある。これに関し、傭船者から、シッパーとの貨物の売買契約上規定されている、本船がCancelling Dateに間に合わなかった場合の違約金(約US$10,000)の支払いを求めるだろう旨の連絡を受けている。仮に本船がCancelling Dateに間に合わなかった場合、この違約金を支払う義務はあるのか。
基本的には、支払義務があるものと思われる。ただし、船主がそのような違約金の額を知っていたか(あるいは知っていて当然といえたか等)、その違約金を傭船契約上の損害であるとみなせるか等といった議論の必要性は指摘できるところで、厳密にそっくりそのままの額を支払う義務を負うものとは必ずしもいい切れないのではないか。